鈴本10月上席夜の部

小三治さんを聴きに行く。
10月の鈴本には行けないかなぁと思っていたが、行けた。行こうと思えば行けるものだ。
と、エラソーに思っていたら、台風が来た。長野県内の電車は、始発からストップしているという。
いくら私が雨女でも!と思っていたが、泊まっていた別所温泉から上田までの上田電鉄と、長野新幹線は動いていて、徐行したり停車したりしながらなんとか東京にたどり着く。名古屋経由で帰るはずだった両親の列車を手配しなおして、のぞみに乗せて、ようよう鈴本へ。
そうやって寄席に行って、まぁちょっとへとへとなのだけれど、実際に客席に座って聴くとやっぱりとても楽しくて、おお、このためなら万障繰り合わせますとも!と思う。

前にも書いたけれど、師の高座の素敵さは私の語彙力では表現できない。その独特の間と、調子と、視線の確かさに酔うのだということだけははっきりしている。そこには温かいものがながれていて、私はただそれを愉しめばよい。

「天災」。台風の日に天災。覚えやすい。のはおいといても、とても好きな噺だった。
「お〜ら、し〜らね〜よ!って節をつけやがんだよ!」
八五郎の短気ぶりが、まずおかしい。べにやの隠居にそれを諌められるところは自分も短気なので半分まじめに聞いて、そのあと「てんせいを振り回しに」でかけ、始めのうちは熊のツッコミにこたえていた八五郎が、だんだんそれを無視して暴走し始めると、もうメタメタである。息つく暇もない。
次の日は「禁酒番屋」。この日はお酒を飲む様子の描きわけが丁寧で、くっきりしていて、表情がより豊かで、前に聴いたのとまた違った味わいだった。

この日は正雀さんの踊りもでた。先代正蔵で奴さん、大成駒で姐さん。途中ででる掛け声も声色。そんな踊りなのにまったく素のような正雀さんをすごいと思った。
姐さんは歌右衛門さんというよりも歌右衛門さんの真似をする歌江さんを彷彿とさせたが、歌江さんも長いことみていないのでどっちにしろとても懐かしかった。

そういえば世津子さんの「もう大成功!」が好きです。時々日常生活で使ってしまうくらい。