清治 近松復曲三夜  第一夜

久しぶりの紀尾井ホール。清治さんが「用明天王職人鑑」を復曲するというので、楽しみにして出かける。相変わらずの雰囲気にビビるが、今回は友人が一緒だったので、ずいぶん心強かった。一人ではこれない。

幕が開き、内裏の段は、一人遣いの人形と呂勢さん・千歳さんの語りですすんでいく。
一人遣いだと、いっそう遣い手の力そのものがあらわれるようだった。山彦皇子を遣っているひとがうまかったので、あれはきっと玉女さんに違いないと友人といいあう。でも諸岩の妻はちょっときびしい・・・というか、ニン(って人形でもいうのかな)じゃないというか、ううむ。であった。情念とかには縁のない芸風というか、玉女さんには玉女さんならではのすごさがあるけれど、それが今回のお役では発揮しにくかったように思う。

それ以降、鐘入りの段に至るまでが、職人尽くし以外、ほぼ、切り絵とナレーションで上演され、おいらはスライドショーを見に来たのでしょうか??という感じで、途方にくれた。
まだそれだけを観ている間は、そういうものかと思ったりもしたのだが、鐘入りの段に入って、前半の地色っぽいところで、ああ近松はこうだったなぁと懐かしく思い出したり、鐘入りになって、きりきりと三味線の音が収斂されていく感じに、頭がきゅーっと冴えたりすると、それを全部に望んでしまうのが人情・・・でもないのか。おいらだけか。
でもほんとうに、曲はよくできていたなーと思うのだ。だから、余計に。

準備期間が足りなかったり、予算がなかったり、色々理由はあるだろうけれど、場として上演するならば、せめて素浄るりにはもっていってほしいなぁと思う。結果論に過ぎないし、これから回を重ねていくなかで上演形式にも工夫が凝らされていくのかもしれないが、なんだかとらえそこねているような気がする。或いは私自身が。