池袋二之席昼の部

二之席楽日。
ざっとみるつもりだった東京近代美術館の所蔵品展に思いのほか時間がかかり、演芸場に着いたときはかなりの行列になっていた。すごいな〜。並ぶのは嫌いだが、寄席ばっかりはしょうがない。ロケット団喬太郎さん・小三治さん、だもの。並ぶよ。並びますよ。

喬太郎さんは、織っぽい濃い緑地の縞の着物で、牢名主といった風情で登場。羽織がどてらにみえた。高座にあがる様子では正座できるのかなと心配になるくらい足が痛そうだったが、一旦座ってしまえばスゴイ。客席ごとさらっていく。
新作とか古典とか、本当は関係ないんだなぁと思う。条件が揃えば、客席ごと持っていくことができる。この日は「夜の慣用句」だったけれど、行き過ぎではなく練れていて、テンポがよくて、隣のおじいちゃんたちにも大うけしていた。そういえば、寄席での喬太郎さんを見るのは初めてであった。底力をみた思い。

それから「碁泥」をやりはった小里んさんが、なんかいいなぁーと思った。こういう巡りあいがあるのも、寄席のよいところ。 

そうこうするうちにもどんどん客は増え、トリの頃には通路という通路にまでひとがあふれる。あの人口密度で、皆が一心に小三治さんの話を聞いている様子は、さながら村の集会のようであった。参加したことないけど。庄屋さんであるところの小三治さんの絶対的優位というか、いっそ、君臨していると言ってしまってもいいんじゃないでしょうかというような、あの不思議な雰囲気。
あんまりたくさんこられてもねー、こっちも生身の人間なんだよ!みたいな話から、「お客さんは我々を選ぶことができますがー・・・。ね?」で大笑いって、みんなマゾ?
などと、本気で思っているわけではないのですが。

とにかく、自分も含めて100何人が、近距離で、精神的にかぶりつくという状況は、日常ではあまり出現しないのでたいそうおもしろかった。
そして、「粗忽長屋」へ。好きな噺だ。小三治さんで聴けて嬉しい。精神的かぶりつき度合いを一層深めて、その世界にひたる。

末広亭のときからずっと考えていたのだが、空気をふるわせているかのような、高座からじんわり流れてくるアレは、一体なんだろう。
ひょっとすると自分の妄想なのかもしれない。でも、なんかちょっと魔法のようと思った。