皇室の名宝 ― 日本美の華

動植綵絵がいっぺんに観られるというので上野へ。
こんなに短期間のあいだに、再び観ることができるとは。生きててよかった。大げさでなしに。
承天閣で観たときのような曼荼羅感はもうなかったけれど、個々の絵は変わらず魅力的だった。なんというか、やっていることは細かいのだが、描いているものがでかい。たとえば、「牡丹小禽図」と「薔薇小禽図」を並びでみていると「あー、この中に溺れたい。」と思ったりする。私は溶けて、世界の一部になる。

そして永徳の「唐獅子図屏風」。安土桃山という時代そのもののもつ野性味が、ここのところの自分のあらゆる面でのテーマのひとつでもあるので、吸い付くようにみた。うっとりだった。筆跡をなぞっていたらしびれてきた。洗練とともに失われていくもののことを思う。

これに又兵衛の「小栗判官絵巻」で、もういっぱいいっぱいであった。後ろに抱一の「花鳥十二ヶ月図」があるのに、それをじっくりみる気力が残っていない。この「小栗判官絵巻」が、ちょっとしか出てないのにおもしろいのだ!巻いてある部分もみたいぞ!所蔵展にも又兵衛の絵は何点か出ていたけれど、それと比べても段違いにおもしろかった。

そんなわけで、第2室はよろよろしながら歩いているだけ・・・の状態だった。朦朧とした頭で「よくできた壷って、抽象美術のようだよ・・・」と思ったのが最後の思考。