4月文楽公演 妹背山婦女庭訓

初日、ようよう山の段をみる。
この段の魅力は、一対という言葉に尽きる。
妹山と背山。定高と大判事。雛鳥と久我之助。小菊と桔梗。定高と雛鳥。大判事と久我之助。そして、床。
とくに、定高と雛鳥という対のおもしろさを、簑助さんと文雀さんに教えてもらった。言葉にできない類の妙。

古への神代の昔山跡の国は都の始めにて、妹背の始め山々の中を流るる吉野川。塵も芥も花の山。実に世に遊ぶ歌人の言の葉草の捨所
背山の出だし、この部分に、反吐の匂いがしないと落ち着かない。正しくは、反吐が出るほど稽古した匂い、なんだけれど。って、私は一体浄るりに何を求めているのでしょう。文字久さんは、腕をあげはったなーとは思うのだが、少し物足りないような気がした。山の段のデカさを感じる。
三味線好きとしては、前半の富助さんと清治さんの弾きあいがとてもおもしろかった。意図されたことを、そのように聴けるってあまりないので。三味線といえば、錦糸さんもすっかり充実していて、今、高いところで一番いい具合に体力と技術のバランスがとれているのは、錦糸さんではないだろうかと思った。
そして、住大夫さんと綱大夫さんという対。いまだこのように聴けることをほんとうに幸せに思う。今はまだ過去も未来もなくただそれを味わっていたい。