塩田千春 精神の呼吸展

前に居並ぶ靴に、広島平和記念館で展示されていた服を見たときの感じを思い出した。誰かの所有物だった頃の残像のようなものが、よく似た感じでそこにある気がした。
ただ、似てはいるが、少し違う。
平和記念館にあった残像は、辛く悲しく正視できなかったが、ここにあるものはそうではない。
けれど、毛糸で結ばれた大量の残像は、心に小さな漣をたてる。

「眠っている間に」というインスタレーションをみながら、ずっとこういうことを考えているとしたら、塩田さんという作家さんは、本当にタフな人なんだろうなと思った。気になるからこそ、表現するのだろうか。
小者な私は、あの微妙なリクライニングの角度に、あれは床ずれになった人用の角度っぽいよな〜、本格的に眠るにはやっぱ平らがいいような気がする、とかいうどうでもいいことを、みてる間中ずっと考えていたのだった。

長い間行きたかったところへ、ようやっと行くことができた。モディリアーニ展も観たけれど、今は断然、こっちが好き。